住まい手とつくり手の 思いがちりばめられた和の家

野球が大好きな3人の息子たちが、のびのびと過ごせる住まいを。そんな思いで建てたのは、広い庭を持つ和の家。
住みはじめて11年目となった今、大きく枝を広げた木々が涼やかな木陰をつくり、家で過ごすひとときを豊かなものにしてくれています。
春の陽気が心地よい休日の昼下がり、ここに暮らすMさんご一家を訪ねました。

外壁や塀の木材の色の違いや、高低差のある植栽が目にも楽しい
大工がつくる和の家に憧れて
香川県西部の三豊市。
県道沿いを走っていると、焼杉板の黒い外壁と青々と茂るアオダモの木が、ひときわ印象的なお宅があります。
こちらが今回取材に訪れたMさんの住まい。
カーポートはコンクリートの洗い出し、玄関までのアプローチには飛び石やユキノシタの植栽と、全体が和のテイストでまとめられつつも、明るい色の板塀とのコントラストがモダンな雰囲気を感じさせるお宅です。
Mさんご一家は、高校3年生を筆頭に高校2年生、小学校6年生のいずれも男の子とご夫妻の5人暮らし。
夫妻が家づくりを始めたのは、一番上の息子さんが小学校に上がる少し前というタイミングでした。
奥様の実家のそばで物件を探していましたが、なかなか希望に添うものが見つからず苦労したそうです。
「2軒分の土地として売り出していたこの土地を、見つけたのは偶然から。
上2人の息子たちはすでに野球に興味を持っていたので、将来のことを考えるとなるべく広い庭がある方がいいと思い、まとめて購入しました」とMさん。
そこに建てる家として思い描いたのは「大工がつくる和の家」。
手仕事が随所に感じられるような温かみのある住まいにしたいと、知人の大工に相談しました。

家族が集まるリビングダイニングのテーブル。5人で座っても広々
家族が集まる場所をつくる
ご夫妻が相談した知人は、菅組の大工。
社内の設計士にもつながりがあったことで、信頼して家づくりをまかせられると依頼することにしました。
「菅組の家をいくつか見て、私たちの理想に近いと感じたのも決め手でした。
夫婦ともに仕事で忙しかったので、腕が確かな大工さんと素敵な提案をしてくれる設計士さんにまかせられることは、安心感も大きかったですね」
そんなご夫妻が一番の希望として最初に伝えたのは、家族全員がゆったりと過ごせるリビングダイニングをつくり、その中心に大きなテーブルを設置することでした。
学校や勤務先から帰宅して、料理をしながら子どもたちの宿題を見守れる場所になるようにというのが当初の目的でしたが、実は成長した今も、息子さんたちはここで教材を広げるのが日常になっているそうです。
「きっと居心地がいいんでしょうね。
高校生の息子たちは遅くまで部活をして、帰宅したらここでごはんを食べながらその日あったことを話して、その後学校の課題をして。
寝る頃になってやっと2階へ行きます」と奥様。
このテーブルを囲むことが家族全員の日常であり、結束力を高める役割も担っているのかもしれません。

左:自然素材でゆるやかに外と隔てられたアプローチ 右:キッチンからリビング越しに庭を見渡せる。開け放して大人数でバーベキューをすることも

上:設計士からの提案で、右側の壁は息子さんたちの行事予定などを貼れるような仕様に。実用的で重宝しているのだそう 下:野球の練習もできる広い庭
記憶とともに残る手づくりの木札
数日間家を空けて帰ってくると、今でも檜の香りがするというMさんのお宅。
床には檜、構造材には杉を使い、どっしりとした梁は存在感があります。
竣工当初から時を重ね、柱や床があめ色へと変化してきたリビングには味わいがあり、室内から段差なく延びた縁側を通じて庭に出ることができます。
「我が家は年中バーベキューをしていますが、軒も長いので、雨の日でもできるんですよ。大工さんがつくってくれたイスや踏み台が、今でもとても重宝しています」とMさん。
大工がMさんご一家のためにつくったものは他にも。
「棟上げで使った木札100枚と、それがぴったり収まる木箱を作ってくれました。面取りが施された丁寧な仕上げに感動してしまって!
その後しばらく子どもたちがドミノや積み木にして遊んでいましたが、今も大事に保管しています」と話す奥様。
家の完成までにいくつもの感動があったと当時を振り返ります。

上:階段脇には小さな窓も 下:上棟式の餅投げの際に大工さんが作ってくれた100枚の木札と、それがぴったりと収まる木箱
「いい家にしたい」という共通の思い
現在もお子さん3人は野球に打ち込んでいて、週末ごとに練習や試合で家族全員が大忙し。
野球中心の生活を送っているため、家に帰って手を洗い、風呂に入って着替えてからリビングへ、という動線もかなり重宝しているのだそうです。
「細かい注文や無理かもしれないと思うようなリクエストにも、菅組のみなさんがとても熱心に対応してくれました。
一丸となって『いい家にしたい』という思いを感じることができましたし、家が建った後も相談に乗ってくれるのが心強いですね」
今、家づくりを振り返って感じるのは「人と人のつながりが想像以上の家にしてくれたということ」とMさん。
思いが形となった理想の住まいで過ごすご一家の笑顔が印象的でした。
場所:香川県三豊市高瀬町
竣工:2014年11月
延床面積:126.59㎡(38.36坪)
構造:木造2階建て
設計・施工:株式会社 菅組