家族をほがらかに包む そとん壁の家
高松市の郊外。河川敷を下りると、サッカーや野球の練習をする子供たち、ランニングやウォーキングをする人たちで、朝から活気がありました。
一歩入れば静かな住宅地で、水路から聞こえる麗しい水音と一緒に、はつらつとした子供の声がどこかしらから聞こえるHさんのお宅を訪れました。
目指したのは、心地いい家づくり
整った室内。家にあるものは、ご夫婦でこだわって選んだ好きなものばかり。丸テーブルや椅子などの家具と、ご主人が選んだ絵、奥さまが好きなドライフラワーなどが白い室内をさりげなく彩ります。お互いの好きなものは似ていて、選ぶものの基準は「この家に似合うもの」。
奥さまの育児休暇の間に家を建てる計画をされたHさんご夫妻。この土地にたどり着くまでは紆余曲折があり、少し心が折れかけた時もありましたが、それでも粘り強く土地を探し、いくつかの住宅メーカーを回ったそうです。「その頃から住宅やインテリアに興味がわき、いろいろな本で勉強しました」とご主人。家づくりの参考に購入したのは、建築家・伊礼智さんの本『小さな家 70のレシピ』。伊礼さんの設計教室で3度最優秀賞を受賞したことのある弊社設計スタッフが設計した住宅の見学会に訪れたことがきっかけとなり、理想の家づくりが始まりました。
「スタッフさんたちは私たちの意見を取り入れながら、実際の暮らしを想定したプロの視点でアドバイスをしてくださり、深く納得しながらプラン作りが出来ました。本当に心地いいお家で、両親や友人にも褒めてもらえます」と奥さま。
photo(左):備え付けのソファは、お気に入りの場所のひとつ (中央):玄関ポーチからウッドデッキを見る (右):やさしい陽の光が差し込む2階の個室
ゆるやかに広がっていく 自分たちの世界
パッシブソーラーを取り入れ、ご主人こだわりのそとん壁(※)やアカマツの無垢の床材など自然素材を効果的に使用。真冬でも足元から底冷えすることがない上に、夏は夕方家に戻った時でもモワッとした暑さがなく、四季を通じて快適ですと奥さま。パッシブソーラーの換気効果と断熱・気密工事が、心地よい家づくりにつながっていることは間違いないようです。
室内は心地良さを考え、あえて天井高を抑えました。寝室のある2階から階段を降りたところに台所があり、家事導線はコンパクトに。一見、収納スペースが全くないと言っていいほどすっきりと整ったダイニングですが、創作家具や、階段下の物入、屋根裏部屋に収納がしっかりと備わっており、使い勝手もいいそう。「触り心地が気持ちいいです!」という、丸みのある階段の手すりも、実は設計士のこだわり。構造を強化するための丸柱は、Sちゃんの木登り遊びに大活躍。訪れた取材スタッフに真っ先に披露してくれました。
※「そとん壁」・・・シラス台地の「シラス」から出来ている外壁材で、100%自然素材なのに完全防水性、透湿機能があり、紫外線や風雨による退色・劣化がおきにくく、汚れも付きにくい。高断熱・高保湿効果で、一年中室内を快適に保ってくれる。素朴で上品な外観からは想像できない、高機能・高耐久性のある塗り壁。
photo(左):収納棚を中心にぐるりと廻れる動線 (右):外とゆるやかに繋がる
photo(左上):家族がいつもいる場所でお勉強 (右上):オリジナルのキッチンと背面収納 (左下):キッチン・ダイニングから庭を見る。木の塀と木々が目隠しとなりプライバシーを守ります (右下):リビングの奥は、小上がりの畳コーナー
かけがえのない時間を包み込む 自然素材の家
そんなほがらかなご夫婦の暮らしも、お子さんの小さい今は慌ただしく過ぎるばかり。仕事の服を脱いだらお母さんの顔に。保育園に子供を迎えに行って、スーパーに立ち寄り、右手は荷物、左手には小さな手。お友だちと手品をしたよ、とSちゃんのお話を聞きながら、テキパキと食事の用意。お絵描きやぬりえが大好きなSちゃん。「見て見て~!」と描いた絵を持ってきてキラキラの笑顔。お気に入りのソファーでくつろいでいた裸足のご主人も、Sちゃんの遊び場でもある隣の和室で一緒に遊びます。食事前のひと時、オープンなダイニングにやさしく響く親子の笑い声。温かいライトと共に家族の気配がこの家をあたたかく包み込んでいます。
今日も明日も、日々はそんなには変わらない。うまくいかない時だってある。しょんぼりする時もある。毎日一生懸命で、今が精一杯。でも、笑って話せばなんてことない。
そんな日々こそ、家族で過ごすかけがえのない時間。みんな笑顔で楽しく暮らそう。自然素材のやさしい家は、慌ただしい日常をおおらからかに受け止めてくれる、Hさんご家族にぴったりなお家でした。
高松市 H邸
2018年5月竣工
延床面積:107.35㎡(32.53坪)
構造:木造2階建て
設計・施工:(株)菅組