店舗と住まいと家族の繋がり

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「今、旬の魚は…」「この魚の美味しい食べ方は…」ご夫婦の笑顔に、お客様との会話が弾む「宇賀鮮魚店うか屋」さん。6年前、現在の場所に移転オープンした地域密着のお魚屋さんです。
そのお店に繋がる住まいと、その場所であたたかな日々を過ごす宇賀さんご家族を訪ねました。

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以前は道を挟んだ向かい側にお店を構えていました。1階が店舗、2階が住まいという造りでしたが、移転を機に店舗の裏に住居スペースを設け、1階のリビングから廊下を通じてスムーズにお店へ行き来できるようになりました。お店の間取りは、慣れた動線で動けるように以前のお店とほぼ同じ配置になっています。

朝早く、ご主人が市場へ仕入れに出かけ、帰ってきた頃、奥様と出勤前の息子さん3人で食卓を囲みます。

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住居側の門を開くと、まずお庭が迎えてくれます。完成の際にご家族みんなで植えた三本木鎮守(※)は、背丈を超えるほど大きくなっていました。シンボルツリーのモッコクの根元には、自然に落ちた種から芽が出て、ちいさな子どもたちが育っています。道路側はお客様用の駐車場になっていますが、木塀と元気な木々たちのおかげで、通りからの目線をほどよく和らげます。

丸い窓の玄関を抜けると、リビングが広がります。まず目に入るのは大きなスピーカー。ご主人が二十歳のころから集め始めたもので、レコードをかけると臨場感のある音が響き渡ります。正面の壁に張られたイタリア製のタイルは、スピ―カーに合うようにご主人が選んだもの。また障子の格子デザインやウイスキーを熟成した樽を素材にした床板など、椅子に腰かけると、ご主人がこだわりぬいたお気に入りのポイントが各所に伺えます。

後ろに目を向けると、デッキ越しのお庭からあたたかな陽が差し込みます。深い軒は、高いところから注ぐ夏の日差しを遮り、反対に低い位置にある冬の太陽からは、しっかりと日差しを取り込みます。

デッキにはご主人が25歳の時に購入し、以来40年以上大切に乗っているバイクが停めてあります。その傍らにあるのは息子さんのバイクです。お父さんの姿を見ているうち、いつしか2人分のバイクが並ぶようになりました。実は県外にいる下の息子さんも同じ趣味を受け継いでいるそうです。男3人、それぞれの愛車を眺めながら話をする日が来るかもしれません。

キッチンに立つ奥様からも、お庭と並んだバイクが伺えます。家族の安全を祈りながら、同じ趣味で語り合えるようになった子供たちの成長を見守ります。

※三本木鎮守
菅組では家を建てたお施主様に、「シイ、タブ、カシ」の3本の苗を『三本木鎮守』と名づけてプレゼントしています。昔からその地域に根付いている「ふるさとの木」から常緑の3種を選びました。落葉樹のように葉を落とすこともなく、ほぼ手のかからない小さな「鎮守の森」になります。「小さな森」があれば、生きものたちのすみかや、人と自然が共生する「街の風景」をつくりだすことができます。

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和室は長く使えるようにと、質の良い素材が選ばれました。床柱や框には今では珍しくなった樹種もあり、大切に使われている事が分かります。天井の杉板は、浮造り仕上げが施されています。何度も磨くことで固い部分のみが浮き上がり美しい木目が際立つ、伝統的な技術です。

この和室の清々しさをより引き立てているのは、床の間に飾られた「千寿」の文字。ご主人のお父様が下書きなしに襖に書いたものだそうです。隣の「慶」の文字は息子さんの書。やわらかく、しかし迷いのない筆の運びは、ご夫婦から受け継いだ息子さんのお人柄の良さを現しているようです。

店舗と住まいが一体となった宇賀邸は、家族の絆をより深く繋ぐ、あたたかい木の家でした。

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三豊市宇賀邸

2012年10月竣工

延床面積:
店舗≫49.63㎡(15.04坪)
住宅≫180.04㎡(54.55坪)
構造:
店舗≫木造平屋建て
住宅≫木造2階建て
設計・施工:(株)菅組

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