21年目のレンガの家
住んで20年。日々変化する家族の暮らしを見守ってきたO邸。
丁寧に暮らせば、それに答えるように家も表情を変える。この家の持つ懐の深さと、そこで育まれる豊かな時間。
そして21年目、これからも紡いでいく家族と家の物語。
丁寧な暮らし
Oさんご家族の家づくりのはじまりは、長年住んでいた家の古くなった部分の改修を考えていた所に、下水道工事のタイミングが重なったことがきっかけでした。新築して20年経ち、今でも清々しくあたたかな表情をみせるO邸をたずねました。
Oさんご夫婦が家づくりのはじめに希望されたのは、奥様が憧れた北海道の小樽運河沿いに並ぶレンガ倉庫のような外観です。開いた本をかぶせたような切妻屋根と軒の浅い箱のようなシルエット。時折ふと眺めては、憧れのレンガ倉庫同様、古さが味わいに変わるレンガの良さを実感するそうです。「シンプル」をテーマに生活動線にも配慮し家づくりを進めました。必要以上の部屋を作らず、なるべく1つの空間で完結するようなシンプルな間取りにしました。ダイニング横に、フローリングと同じ高さに畳を敷いた茶の間があります。落ち着いて畳に座り、居心地良く家族団らんできる空間になっています。また、水回りと家族のクローゼットを1階にまとめて配置することで、身支度・洗濯などをそこで済ませる事ができます。2階にはそれぞれの寝室をつくりました。
シンプルな空間は掃除のしやすさにも繋がります。手入れがいき届いたO邸は、20年以上愛用しているという家具や身の回りの道具からも、清々しい暮らしがうかがえます。またシンプルな空間は、インテリアによって雰囲気を様々にアレンジできる楽しみもあります。玄関からみえる飾り棚のグリーンや、キッチンカウンターなどに置かれた小物類は奥様が少しずつ集めたもの。新築当初にはなかったけれど、子供たちから手が離れて時間に余裕ができた頃、少しずつ飾るようになったそうです。
昨年は水回りを中心に改修し、さらに長く愛せる家になったO邸。「毎日過ごしていると気付かないけど、私たちと一緒に家も成長しているんですよね」と奥さま。日々、少しずつ家族の思い出を刻み、今のあたたかな表情のお家があるのかもしれません。
自然体で楽しむ 家族の時間
現在、息子さん2人は就職し別の場所で住まわれていますが、お休みの時など家に帰ってくることを楽しみにしているそうです。「子ども部屋はそのままにしています。寝る時もいつものベッドで。」と笑う奥さま。息子さんも、寛げるいつもの家で、家族と集いのんびり過ごす時間を、お家で待つOさんご夫婦同様に大切にしているように感じました。家で過ごす時間は決して特別なものではなく、ここに帰るといつでも家族との日常を過ごせる、そんな場所になっているのかもしれません。
O邸の、清々しい中にもあたたかく迎えてくれる表情は、家族の暮らしの中で育まれたものなのだと感じました。