古材とともに暮らす
良いものを使う。長く使えるもの、本物を使う。すると年月を重ねるごとに魅力が増してゆく。
白木の檜フローリングは飴色に、焼杉の外壁はより風景にとけこんで。新しさだけではなく、その変化の美しさがある。
だから、古材もこの家に馴染むのかもしれない。
昔ながらの日本家屋で育ったIさんご夫妻にとって、土間のかまどで炊くご飯や、ちゃぶ台を囲む家族の笑顔、それが暮らしの原風景でした。30年前にこの家を建てる時も、宮大工だった伯父様の影響やお祖父様の希望で純和風の家となりました。
やがてお子さんが独立し住まい手が夫婦のみとなった時、昔ながらの大きな座敷は具体的な用途をなくし、独立した台所はお子さん家族・お孫さんが遊びに来た時みんなそろって食卓を囲むには不向きでした。そこで新築から25年、集まる家族が楽しめる家にしたいとリフォームを決意されました。
外壁はもとの建物と同様に焼杉を使い、漆喰とのコントラストが美しい土蔵風の姿に。座敷中心で細かく仕切られた間取りは、一段高くなった畳スペースと、吹抜けのダイニングキッチンがある間取りに変わりました。腰掛やすい中央の畳スペースは「かしこまらずにお茶を楽しんでほしい」という奥様の思いにぴったりな空間です。ダイニングは大空間でも暖かくくつろげるように床暖房を据え付け、冷暖房の効率とお部屋の使い方の幅が広がるように引き込みの障子で仕切りました。吹抜けを大胆に横切る3本の古材の梁は、三豊市仁尾町にある古材と薪ストーブのお店「古木里庫」で見つけました。
古材ならではの濃い木の色は、その木がまとう時間を感じられます。インテリアを選ぶ際、この存在感のある梁を基調としてイメージを広げました。「日本人らしい生活をしたい」と和の素材や造りを取り入れながらも、現代の要素をさり気なくおりまぜたインテリアがIさんらしい、居心地の良い空間を作り出しています。
暮らしを変えるリフォーム
リフォームから5年。音楽を聴きながらキッチンに立つのが奥様の大好きなひとときとなっています。夜、ふと見上げた小窓にちょうど月がかかることもささやかな喜びです。
「このリフォームがなければお客さまを招くこともなかったと思う」とおっしゃいます。シーンに合わせた設えをし、少しずつ集めた器をセレクトし、お招きしたお客様とお茶を淹れながらおしゃべりを楽しむ時間はこの家がくれたもの。おもてなしの機会が増えたことで、骨董市に出掛けて食器やお部屋のインテリアを探すことも楽しみのひとつに加わりました。
今は、キッチンにカウンターテーブルをつけようと計画中。「新築はゼロからだけれど、リフォームは限られた範囲で出来ることを考える。この家だからこそやってみようと思う。」とリフォーム後も自分たちの暮らしを楽しむことに前向きなご夫婦。使いやすさや、暮らしの楽しみを増やすリフォームは今も進行中です。