薪ストーブと自然素材に包まれた暮らし
田んぼにおむすび山。
讃岐の風景が広がる陽だまりの窓辺に仲の良い兄妹と、その姿を見守るご夫婦。
薪ストーブの炎のように柔らかくあたたかい時間が流れる、自然素材の家を訪ねました。
家族のじかん
友人宅を訪ねた際に、無垢の木の心地よさを感じたというご主人。我が家にも家族にもやさしい自然素材を選びました。土佐和紙の壁は光を柔らかく反射し、杉板の天井は美しい木目の陰影をみせてくれます。香川県産檜の無垢フローリングは飴色に変化し、日々暮らしに馴染んでいきます。お子さんたちがおもちゃを仲良くお片付けしている姿から、大好きなこの家を大切にしたいという思いが伝わります。
リビングダイニングキッチンを中心としたシンプルな間取りは「家全体をひとつの空間に」という奥様の希望から。1階には寝室や水回りなど生活空間が集まり、2階には子供部屋がふたつ。吹き抜けに面した2階のホールには、お兄ちゃんが習うピアノが置いてあり、キッチンで食事の準備をしている奥様の耳にも届きます。呼びかけると、どこにいても返事があり、それぞれの部屋にいても、同じ空気の中で過ごしている事を感じられる、ほどよい距離感です。
また、移ろう季節や流れる時間を映し出す窓は、家族団らんに色を添えます。家の中にいても鳥や虫の声を聴き、空模様や植物の動きに気付く。風景を暮らしの一部として取り込む窓辺では、家族があたたかな時間を過ごします。
東西南北それぞれにある窓は風の通り道をつくり、夏の田んぼや木々の中を抜けたさわやかな風が、家中を駆け巡ります。
エアコンを使うのは真夏の2,3週間のみだそうです。窓の外で稲刈りが始まると、そろそろ薪ストーブの出番。昼間の活躍はもちろん、夜は寝る前に数本の薪をくべておくと、朝もほんのりあたたかさが残ります。また、吹き抜けを上がったあたたかい空気を2階から取り込み、1階の床下へと送り循環させる仕組みで、効率よく家全体をあたためることができます。
庭をみるとご主人のお父様が廃材で作った薪棚が並んでいます。薪割り場から薪棚、薪ストーブまでの動線を短くスムーズになるよう配置したのは、実際に薪ストーブのあるお宅訪問会で、住まい手さんからいただいたアドバイスを基にしました。ご主人が薪割をはじめると、息子さんがじっとその作業を見つめ、時折応援の言葉をかけます。薪割のお手伝いができるのももうすぐかもしれません。
M邸では今年で3回目の冬を迎えます。炎のゆらめきに家族が集う様子が目に浮かぶようです。やさしい素材、やさしい時間。自然素材に包まれたM邸には、家族が寄り添い笑顔のたえない暮らしがありました。