石と家と風景と。

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あたたかな春の陽光につつまれるリビングで、ゆったりくつろぐご夫婦。奥様は卓球の元世界チャンピオン松﨑キミ代さん(旧姓)です。

現在は仕事のため東京で過ごすことが多いご夫婦ですが、年に数回奥様の故郷である香川に戻り、家族や友人と過ごします。
四季折々の木々につつまれ、ご夫婦をあたたかく迎え入れる石積みの住まいを訪ねました。

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石と馴染む住まい

自然が作り出す作為のないデザインは、傍に在るだけで安らぎを与えてくれます。

高松市庵治町で採掘される庵治石を、外構だけでなく室内にも取り入れたリビングは、窓からの光を受け止めた岩肌がやさしい陰影をみせてくれます。食堂と居間を仕切る壁には、それぞれ違った表情の石が使われています。居間側は岩肌を活かしてダイナミックに積まれた庵治石。食堂側は断面の優しい模様を見せた由良石。この由良石は高松市由良町で採掘されていた安山岩です。皇居東庭の敷石にも採用されている石として有名です。「石の表情が豊かで絵画を飾る必要がないんです」と嬉しそうに眺めるご夫婦。はじめは内装に石が使われることに驚いたそうですが、今では身近に自然な素材があることを楽しんでおいでます。

建物を上からみてみると卓球のラケットの形をしています。弧を描いた部分は庭を一望する窓となり、視界が広く眺めの良いリビングを実現させました。奥様がご希望されたのは小上がりの畳スペース。畳とフローリングには床暖房が施されており、いつもの椅子で庭の眺めを楽しんだ後、あたたかい畳の上でお昼寝をするのが旦那さまのお気に入りの過ごし方だそうです。

庭には、新築の際に植えた木々がすくすくと育っています。10年前に植えた3本のケヤキは夏に木陰を作るほど大きく育ちました。

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永く住み継ぐ

いずれは移り住む事を考え、1年前に屋上防水やクロスの貼り換え、打ちっぱなしコンクリートの補強等いくつかのメンテナンスを行いました。古くなった部分は手を入れて、自然素材はその経年変化を楽しんで。一つ一つ丁寧に選び並べられた椅子や、さりげなく飾られた工芸品など、26年の月日を大切に使われてきた家具たちが、家に馴染んでいる様子からも、ご夫婦のこの家への愛情を感じます。

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心が安らぐ豊かな暮らし

東京での暮らしも十分楽しいとご夫婦は話します。「公共機関でどこへでも行けるし、いろいろなお店が立ち並び、遊びきれないくらい。でも、香川に帰ってくると安心するんです。窓辺に座って季節ごとに表情の違う庭を眺めるひとときは、この家だからある贅沢な時間。飽きることがありません」。豊かな暮らしとは便利さを追求することではなく、心から安らげる場所があること、ご夫婦の穏やかな表情がそう教えてくれました。

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